■この寒波で水曜日の朝は一面の雪化粧でした。D30のバッテリーをフル充電して出勤。でも、写真を撮る時間がなくて残念!
■モーツァルトの音楽を「疾走する悲しみ」といったのは誰だったのだろう。そんなドグマの引力に抗しながらきくモーツァルト….。小澤征爾が振るモーツァルトは確固たる構造をもちながらもはかないくらい美しい。高校~大学と、モーツァルトばかりきいたときがありました。この日曜日の朝、小澤征爾が指揮するモーツァルトをテレビできいてモーツァルトは私にとって音楽の原点だと思い返した次第。
■「モーツァルトは歩き方の達人であった。」と書いたのは小林秀雄だ。高校の実力テスト、国語のテストの問題文がこの一文で始まっていて私の眼はそこに釘付けになってしまいました。こんなふうにモーツァルトを書けるのか! 衝撃的な一文でした。歩くことの理想は歩いていることを意識しない歩き方だ。そんな歩き方でモーツァルトは音楽を綴ったという比喩が瞬時に腑に落ちるものを私はモーツァルトの音楽に感じていたということになります。
■池辺晋一郎の『モーツァルトの音符たち』(音楽之友社2002)はモーツァルトの音楽の魅力の仕組みをわかりやすく説明してあっておもしろい本です。モーツァルトはやりたい放題やったんだなぁと思う。なんというアイデアマンだ。
■小澤征爾の音楽作りでうまい!と感じたのは、彼が描いている音楽のイメージをオーケストラのメンバーに伝えるときの言葉だ。こんな感じ、ということを喩えるうまさだ。ただ、文学的なウェットな表現ではない。奏法に直結する比喩である。もちろん、指揮そのものがすばらしいのは言うまでもないのだが、言葉でイメージを共有することは音楽でも大事だ。
■こんなことを思うとき、ふと取り出す本があります。井上直幸の『ピアノ奏法~音楽を表現する喜び』(春秋社1998)です。ピアノだけでなく音楽における表現のエッセンスをバランスよく説いています。奏法や解釈だけでなく音楽の感じ方についても書いているところがいい。どんなにうまい演奏でも音楽の感じ方がしっくりこなければきけたものではない。演奏家の感じ方がしっかり伝わらない演奏はそもそも音楽とはいえない。
■音楽を療法的に使うときも同じで、特定の曲をただ使えばいいというものではない。クライエントとセラピストとの双方の文脈がからみ合って望む新しい文脈をつくり出す音楽活動にするためには音楽を相互的に意図的に使うことが必要であり、それは演奏家として成功することとはちがう要素が必要なのだ。しかし、真に優れた演奏には優れた療法的な作用もあることもたしかである。
■モーツァルトは好きだ。でも、私はロックもジャズもきく。クラシック音楽は基本的に平均率とドミナント・エンジンの音楽です。それもいいがもっとちがうモードの魅力も同じくらい感じる。
■ジミー(幾米)の『君のいる場所』(小学館2001)の冒頭にこんな詩があります。「二人は信じる/求める気持ちが出会わせたのだ/信じあう心は美しい/でも揺れ動く心はもっと美しい」(ヴィスワヴァ・シンボルスカ「恋」より) そう、「揺れ動く心はもっと美しい」…コンテンポラリーということ、同時代、今、この一瞬をいっしょに生きているということの重みは何ものにも換え難いものなのだ。小澤征爾が振るモーツァルトもロックもこの意味で私には同じだけ大事なのだ。
■ロックといえばモントルー・ジャズ・フェスティバル2002のジョー・ストリアーニの『Mind Storm』にぞっこん! テンションは高いがとてもクールで知的だ。昨年のモントルー・ジャズ・フェスティバルではフラメンコとボサノバのエッセンスが効いたジョアン・ボスコと、ゲイリー・バートンと小曽根真との息詰まるようなセッションがききものでした。
2003/01/30
「揺れ動く心はもっと美しい」
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