先日、ある勉強会で子どもの権利条約の政府訳で「(児童の)意見」と訳されているところは原典で「views」であることを知って目が点になりました。「単に意見ではない、子どもはこの世界をどう見ているのか」という考え方、視座で子どもの権利条約が書かれているという説明はとても明晰に思われました。ネットで調べるとここの部分のviewsを「思ったことや感じたこと(views)」と訳しているサイトがヒットしました。一般社団法人TOKYO PLAY(東京都渋谷区、代表理事:嶋村 仁志)の訳として掲載するPRTIMESのサイトです。この言葉だけでなく政府訳とのちがいが大きく興味深く思われたので第12条の両者の訳を引用します。
第12条
原典
1. States Parties shall assure to the child who is capable of forming his or her own views the right to express those views freely in all matters affecting the child, the views of the child being given due weight in accordance with the age and maturity of the child.
政府訳
1.締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
一般社団法人TOKYO PLAY訳
1.この約束を守ると言った国は、思ったことや感じたこと(views)を形にできる子どもが、自分に関係するすべてのことについて、自由に表現する権利を保障しなければなりません。その表現はその子どもの年齢や発達に合わせて、十分に考慮されなければなりません。
原典
2. For this purpose, the child shall in particular be provided the opportunity to be heard in any judicial and administrative proceedings affecting the child, either directly, or through a representative or an appropriate body, in a manner consistent with the procedural rules of national law.
政府訳
2.このため、児童は、特に、自己に影響を及ぼすあらゆる司法上及び行政上の手続において、国内法の手続規則に合致する方法により直接に又は代理人若しくは適当な団体を通じて聴取される機会を与えられる。
一般社団法人TOKYO PLAY訳
2.この目的のために、特にその子に影響があるすべての司法・行政手続きでは、国内法の規則に沿って、直接または代理人や適切な機関を通じて、子どもは声を聴かれなければなりません。
※「思ったことや感じたことを形にできる」とありますが、むしろ、どんな子どもにも自分なりの想いや視点があると信じて、それを受け止めることが大切だと国連の一般的意見(一般的意見12・一般的意見7)にも書かれています。
※viewsとは、論理的な意見だけでなく、子どもの想いや視点そのものを指す言葉です。子どもの声を聴くということは、言葉にならない想い、態度、しぐさ、その背景も含み、発達段階に応じた多様な表現方法で示される子ども自身の視点を丁寧に受け止めることを意味します。
現行学習指導要領の改訂にかかわった経験から国の文書はすべて法令審査を通してときとして印象が異なる字面となることは承知していましたが、子どもの権利条約第12条の翻訳の両者のちがいは字面から受ける印象がその本質までまるでちがうものとして受け取られかねない危惧を表しているのではないかと思います。一般社団法人TOKYO PLAY訳の注意書き(後者※)はたいへん共感するものです。「言葉にならない想い、態度、しぐさ、その背景も含み、発達段階に応じた多様な表現方法で示される子ども自身の視点を丁寧に受け止める」という視座の地平を肝に銘じたい。