2010/07/30

冷蔵庫のない夏

日曜日の夜、冷蔵庫の不調がわかって冷蔵庫のない夏が始まりました。なんとかモーターは回っていたものの、1日で冷凍した物は解け、その後は冷蔵室でカビが生えるという状況でした。翌月曜日に電気店に買いに行ったところ、猛暑で冷蔵庫の故障が相次ぎ、なんと、冷蔵庫の在庫が限られた機種しかないということでした。予算は少々オーバーしたのですが、最新モデルの省エネタイプを確保しました。ところが、配達は最短で4日もかかると聞いてまた驚いて、今日、やっと届きました。新しい冷蔵庫は見るからによくできたモデルで、筐体の割に収容量があるばかりか消費電力はお手頃モデルのおよそ三分の二です。音も静かで、耳をあてるとコンピュータの静音モデルのファンのような音がします。まるで精密機器です。こんなにいい物を作る日本の底力は心強い。

ところで、ほんの数十年前まで電気冷蔵庫なる物は普及しておらず、食品の保存と衛生管理は古代から変わらない方法しかありませんでした。図らずもこの数日間はそれを身を以て経験することになりました。食材は最小限度買って、その都度料理して日に3回の加熱、加熱ができない物は残さない、飲み物は水道水かペットボトルのお茶という生活はそれこそモチベーションが下がりました。食は大切と身を以て思い知りました。

その食すら与えられず幼いきょうだいが命を絶ったネグレクトのニュースを聞いて寒気を覚えました。母親は育児が面倒になったとか。お腹がすいて、暑くなって、意識もなくなって命を絶つとは凄惨だ。だが、現実に起こった。これも日本。ささやかな毎日の営みを大切にしたいと切に思う。

2010/07/24

『借りぐらしのアリエッティ』と病弱教育

慌ただしい一日で、鈴鹿8耐前夜の風の会の後でスタジオジブリの新作『借りぐらしのアリエッティ』を観て来ました。アリエッティのお父さんが翔が病気だと言ったとき、私の頭の中は病気の子どもという設定でいっぱいになってしまいました。病気が文学に登場することは珍しくないのですが、子どもの病気は私にとってもうひとつ一大事なのです。だからこの物語の主人公は翔であってほしいと思うのです。心臓の病気とはもう長い間のお付き合いなのでしょう。手術前の翔は子どもらしくない落ち着きを見せています。そう、病気は子どもらしさを奪うのだ。病気の子どもは医療用語や薬のことをよく知っていて、自分の病気を客観的に語る術を知っている。おとな以上といってもいいくらいだ。翔は思春期に差しかかっていて、覚悟というより諦めすら感じさせる描き方だ。そんな翔はアリエッティを一目見て強く惹かれます。「借りぐらし」という不条理だけどひたすらに生きる姿、そのシンボルがアリエッティです。引っ越しの日に猫のニーヤが一役買ってふたりを引き合わせます。アリエッティは髪留めを翔に渡します。「懸命に生きる君たちを見てぼくも生きなければならないと思った。明後日、ぼくは手術を受ける。君はぼくの心臓の一部だ。忘れないよ、ずっと」翔はそう言ってアリエッティと別れます。もう二度と会うことのない別れですが、新しい自分を見つける別れです。ベッドで翔が読んでいた本は『秘密の花園』でした。アリエッティとの物語は翔の想像のもの。私はそれで腑に落ちるのです。だからこそ病弱教育の学校で勤務していたときに出会った子どもたちを思い出してただならぬ気持ちになります。この物語は病気の子どもの物語だと思います。ジブリでは初めてかな・・・!? 『となりのトトロ』のお母さんが病気という設定は『借りぐらしのアリエッティ』の伏線なのだろうか・・・まさかとは思うものの、次作では不登校や心身症等の子どもを描いてほしいと思っています。
鈴鹿8耐前夜の風の会は今年も猛暑でした。障がいがある人たちがバイクのタンデムで鈴鹿サーキットのコースを1周するというイベントは今年で9回目です。いちばんバイクに乗らない人たちがバイクに乗るイベントに最新モデルのバイクを提供するメーカーや販売店はいつもながら勇断だと思います。今年もたくさんのボランティアのサポートがあって活気がありました。レースクイーンも応援に来てくれます。このパワー、エネルギーを地域共生につなげる術がほしい。

2010/07/19

7月の日曜日のポコ・ア・ポコ

昨日の7月の日曜日のポコ・ア・ポコは10家族のみなさまに来ていただきました。大人数がちょっと苦手なお子さんは早めに来ていただいてしばしお話をする時間がありました。昨日は準備が終わって松田聖子を聴いていたので、「そうそう、聖子ちゃんはどう?」と、「白いパラソル」をかけました。そのお子さんはスピーカーのネットの穴に指を入れながら聴いていました。お母さんは「制服」が懐かしいとか。「ドリカムはダメでした」とも。NHKの「おかあさんといっしょ」がダメというお子さんのお母さんも話に入ってしばし音楽の話になりました。「おかあさんといっしょ」は歌のおねえさんの歌い方によるのかも知れないとか。ポコ・ア・ポコの待ち時間にかけている神崎ゆう子おねえさんはいいようです。さて、ポコ・ア・ポコは新しいご家族もちょうど馴染んでみえた頃で、新しい曲でちょっとゆさぶってもいいかな、と思える時もあったくらいでした。プログラムの最後のバルーンまでがんばろう! そんな見通しも大事。
梅雨明け3連休は5時起きが続いて体力温存に努めました。今日はオデッセイのオイル交換に寄った自動車用品店で待ち時間に水分補給をしようと自動販売機を見たら好きな水がなくてスポーツ飲料を買ったところ、これが大当たりでした。身体がすっと楽になっていくのがわかりました。そうか、そうだったな、と思い出しました。水だけでは生命維持はできない。その勢いで庭の草刈りを短時間で済ませて清々しい気分になりました。

2010/07/16

京都と自転車

昨日は所用で京都に行っていました。梅雨とはいえ京都の蒸し暑さもなく心地よい風が吹いていました。車で走ると京都の街のコンパクトさを実感します。碁盤の目の道は位置をイメージしやすくて走りやすいものです。京都は今も学生の街。自転車を走らせる学生たちのなんと清々しいことか。私もあんなふうに自転車を走らせていたのだろうか。30年も前のことですが、今も京都で大学に足を踏み入れるとその頃の身体感覚がよみがえるかのようです。大学でなくても京都には時々行くものだと思いました。京都の帰りは新名神で豪雨に遭ってまるで洗車をしているかのようでした。新名神を通れば京都まで1時間半です。自転車を持って行って走るのもいい。
来週に迫った音楽療法の研修のパワーポイントをまとめていて大事なファイルがなくなっていることに気づきました。2007年と2008年の資料です。テーマは「音楽が育てるもの」で、ちょっとこなれてきたかなと思っていた内容だっただけに大慌て。その前後のファイルを突き合わせながら自分の思考の足跡を繋ぎ合わせる作業をしていますがこれが遅々として進まない。なんとかこの3連休で仕上げないと資料の印刷が間に合わないという土壇場の状態!
先週末に録画した東儀秀樹の特集番組を少しずつ観ています。この番組でマルチプレーヤーたる文脈を知って腑に落ちるものがありました。様々な音楽と出会い、プレイしてきたことから彼の音楽が生まれてきたのでしょう。1959年生まれということは私と2つちがいです。ビートルズや学生運動に「乗り遅れた世代」のはずと思いながらも、私が生まれた昭和32年と翌33年、翌々34年生まれとは暦以上の大きなギャップを感じているのでまたちがった出会い方なのだろうかと思いました。ビートルズと学生運動の捉え方は世代感覚のひとつの尺度となっているように思います。昨夜の番組では「篤姫」で孝明天皇に扮した東儀秀樹が紹介されて、日本の歴史における王朝文化に思いを馳せる感覚がよみがえりました。幾多もの音楽遍歴を経て東儀秀樹が雅楽に軸足を置くことに私は感銘すら覚える。かといって私は雅楽を聴く人ではないのですが。

2010/07/10

iPhone/iPadと教育

この1週間、朝食をヨーグルトとトマトジュースにしたところ体調がよくてすっきり感があります。ヨーグルトは砂糖なしのプレーン、トマトジュースは無塩です。ヨーグルトを朝食としてもう5年になりますからトマトジュースがいいのかも知れません。あまり食べない方が体調がいいといのも少し複雑ですが、朝食の準備と片づけがとても簡単になったことはうれしくもあります。毎朝、新聞を広げての朝食なので行儀はよくないな…
今朝の朝日新聞「be on Saturday」は神戸大学医学部付属病院医師杉本真樹氏がiPadを使って学生に診断の方法を教えている写真がトップにありました。読めば「OsiriX」(オザイリクス)というMacのオープンソースソフトを使っているとか。YouTubeにも情報がたくさんあって外科医療のことなど素人の私にもこのソフトの実力のほどはわかります。ラップフィルムで覆ったiPadを傍らに置きながら手術することもあるようです。オープンソース、つまり、無料というところもアカデミックらしくていい。私も早速インストールしてみました。私の目的は医療ではなく建築の画像にも応用できないかということです。このところ仕事で扱う内容が多岐にわたってCADも導入しようかという思案中です。それにしてもiPhoneのアプリの多岐多様な展開には驚いています。「OsiriX」もiPhone/iPad版があります。こちらは有料、といってもCD1枚程度です。社会のいわゆる表舞台には直接登場しなくても人の幸せを支えるテクノロジーの開発もまた素晴らしい。iTunes Storeの教育のカテゴリーにもアカデミックなアプリがたくさんあります。iPadの登場でiPhone/iPadは教育の分野がもっとも注目されるようになると思っています。障がいがある子どものためのアプリの充実がいちばんの願いです。
物の話をひとつ。今手もとにあって使える腕時計は3本あって、よくよく意識すると形状や重さ、バランスで気づいたことがあります。1つは電池で動くクォーツのクロノグラフで重さは94g、2つめは自動巻のメタルバンドのダイバーズで134g、3つめは自動巻発電の大柄な162gのレトログラードです。それぞれ用途がちがうのですが、この3本でいちばん気に入っているのはいちばん重いレトログラードです。134gのダイバーズは意識して着けていないと腕がだるくなるので出番が限られてきていたこともあって162gのレトログラードを購入するときに迷いましたがデザインで決めました。ところがこの時計のバンドが優れもので、パーツがある程度の大きさがあって大きな面積で162gという重さをうまく分散させているのです。広い面で重さを支えること、これは身体の姿勢保持にも共通するポイントです。安全で安心できる介助の原則のひとつです。バンドをデザインで見てきたことが多かったので大発見でした。ダイバーズは作業用で、ウレタンベルトに交換すると使いよくなるかも知れない。

2010/07/02

プロボノという社会貢献

今週は伊勢自動車道の津以南が社会実験で無料化されました。1日目は見るからに交通量が増えて津IC出口にはテレビカメラも来ていましたが、徐々に交通量も少し多いくらいになりました。無料化されても渋滞にならないところが地方たる所以でしょうか。無料化の渋滞を避けるために今週から早めに家を出ています。それだけ早く職場の駐車場に着きます。駐車許可証を受けていても満車になったら場所がない、つまり、早い者勝ちなのでけっこう早く着いて車の中で時間待ち?をしている人がいます。中にはテレビを観たり外国語の勉強をしたりする人もいます。なるほど!と思いましたが私はそこまで器用ではありません。その日のことを思うと落ち着かず、一刻も早くとデスクに向かっています。そろそろ仕事に慣れてきたところですが、このところインスピレーションが鈍って閉塞感があります。モードを切り替えるというのだろうか、ちがう空気を吸いたい気分でもあります。

先週末に荻野規子著『RDG レッドデータガール はじめてのお化粧』(角川書店 2009)を一気に読みました。ストレートにおもしろい。でも、字面は読みやすくても日本文化の厚い知見がしっかり支えているので薄っぺらな印象がありません。これはと思い立って「勾玉三部作」の『空色勾玉』『白鳥異伝』『薄紅天女』(徳間書店 1996)と『神風秘抄』(徳間書店 2005)を取り寄せました。『RDG』もそうなのだが、王朝絵巻を観ているような、また、陰陽師が登場するあたりは学生のときに読んだ福永武彦の『風のかたみ』を彷彿とさせてあの頃の空間に包まれているような感覚になります。そもそもそんなファンタジーが好きなのかも知れない。

昨夜のNHK「クローズアップ現代」は「プロボノ〜広がる新たな社会貢献のカタチ〜」で見応えがありました。「プロボノ」とはラテン語の“Pro Bono Publico”(公共善のために)が語源とか。10年ほど前からアメリカ(またアメリカだ!)から始まった社会貢献とのこと。仕事で培ったスキルを無償で提供する。仕事で手応えが得にくくなる中、自分の専門性、スキルで直接NPO法人などを支援することで成功体験を得ることがやりがいにつながるという。この番組を観て腑に落ちるところが多々ありました。自分自身の体験でもあります。組織の一員としてやり遂げる仕事もいいのですが、自分で直接やり遂げることは大きな自信と係わる人との関係性を確かめることです。もちろん大きな達成感がありますが不思議と謙虚な受け止め方になります。仕事をするならプロフェッショナルでありたいと誰しも志をもつでしょう。時々、プロボノを体験することで自分を試そうではないか!

iPodやiPhone、iPadをASD(自閉症スペクトラム障がい)などコミュニケーションが苦手な人のAAC(Augmentative and Alternative Communication = 拡大・代替コミュニケーション)のツールとして使う試みが始まっています。私も早速「Voice4u」をインストールしてみました。これはツールとしては第一世代といえるでしょうか。でも、オリジナルのカードを簡単に作成できるなどのカスタマイズも可能で、シンプルだからこそいろんな使い方ができます。直接的なコミュニケーションだけでなく、例えば「お絵描き」ソフトや触れると反応する画面のソフトによって外界の認知や自分の動作が作り出す因果関係への気づきなどの使い方もできます。ただ、これらを支援ツールとして使いこなすにはセンスが必要です。そこがプロたる所以ですが私はもう一歩がんばってプログラミングをしたいと思う。

iPhoneのOSをアップデートしようとしたらiTunesとセキュリティのアップデートに小1時間かかり、iOS4のダウンロードにまた小1時間かかりました。サイズは378MB! アクセスが殺到しているのでしょうか!? それでもきちんと機能したのはほめていい。肝心のiOS4はメールと壁紙が変わったことがわかっただけで新しい機能は宝の持ち腐れかも知れない。

『レディ・ムラサキのティーパーティー らせん訳「源氏物語」』

 高橋亨の一連の著書と並んで今私が注目するコンテンポラリーの源氏物語論です。とんでもなく面白い。毬矢まりえ・森山恵の共著です。 毬矢まりえと森山恵はアーサー・ウェイリーが英訳した源氏物語を邦訳しています。ひょんなことからその「らせん訳」を読む前にこの『レディ・ムラサキ・・・』を読...