2006/01/29

幾たびかの旅

■身近な人が入院して病院通いが続いています。“命”そのものを思わずにいられないとき、人は価値観を揺さぶられます。医療というパラダイムと私たちの日常のパラダイムとをつなぐもの、それがひとりひとりの個人に委ねられている状態は私を落ち着かせません。患者だけでなく医師と看護師の負担は大きい。満床の大病院にはそれでも次々と傷病の人が来て慌ただしく、治療の場ではあってもセラピーの場とは思えません。現場は文字通りたいへんです。病院の6階の窓から見える松阪の夜景はきれいなのに…ほんとにきれいです。
■若尾裕著『奏でることの力』(春秋社 2000)の「この世で最後に聴く音楽」を読んで、私は、自分にとっての奏でることの意味を考えました。ときおり思い出しはしましたがそのために突き詰めて考えてはこなかったこのことを、今また考えずにいられません。病院で私が奏でるとしたら何を奏でるのだろう。ターミナルケアで“音楽療法”が成し得ることは何なのだろう。いや、音楽療法というパラダイムではなく、音楽そのものの領分のことです。私はまた幾たびかの旅に出る。
■辻邦生の文体に30年ぶりに触れました。辻邦生をむさぼるように読んだのは高校の頃です。今では古本屋でしか見かけない本を探す。これも旅。
■今夜の「情熱大陸」(毎日放送制作)はベルリンフィルの主席ヴィオラ奏者清水直子でした。昨年のジルベスターはモーツァルトプログラムだったようです。サイモン・ラトルのモーツァルトはヴィヴィッドで楽しい。「この世で最後に聴く音楽」はモーツァルトかも知れないと思うのだ。

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