日曜日の朝日新聞の読書特集「漂流 本から本へ」で筒井康隆がこんなことを書いていました。「小説などにうつつを抜かしている時ではなかった。大学受験が迫ってきていたのだ。成績は最低点に近く、音楽や美術の成績がいくらよくても入試とは無関係である。(中略)勉強しなければならなかったのだが、どうしてもやる気にならなかったのだからしかたがない。」こう書いた筒井康隆は同志社大学で美学を学んだと知ってなんだか腑に落ちるものがありました。同志社大学文学部美学芸術学科は私が第一志望で入れなかったところなのです。思春期、とくに十代後半に出会った文学や芸術はその人生を決めるインパクトがあると聞いたことがあります。私も然り、なのです。ひたすら小説を読み、音楽を聴いて受験勉強が手につかなかった。浪人はしましたがその頃の真っ直ぐな日々は時を経る毎に今の私を支えてくれていることがますます鮮明になってきています。理路整然とした考え方が大切であるように情緒も同じように大切だと考えます。決断するときは情緒が決めるとさえ私は感じることがあります。『国家の品格』(新潮新書 2005)を著した藤原正彦氏は「祖国とは国語」をテーマにした講演でこう述べています。「『学問』とは、語彙の習得であり、思考を言語化することである。国語を学習する目的は次の3点である。①読書を通して国語力をつけることにより教養を身につける。②国語力をつけることで、論理的な思考ができる。③論理の出発点となる仮説を選択する力である情緒を養う。」情緒は豊かな語彙で育まれるだけでなく、文学や芸術、人との様々な出会いが情緒の核そのものを育むのだと思います。
2009/09/21
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