「アデルの恋の物語」は1976年に日本封切りですからもう35年も前の映画で、イザベル・アジャーニがブレイクしたフランソワ・トリュフォー監督の作品です。当時、学生のとき京都で観た映画の中でもっとも印象的な作品のひとつです。物語も然ることながらアデルが書店で紙を買うときに出す大きな硬貨が鮮明に記憶に残っています。年末、30年余ぶりにDVDで観た「アデルの恋の物語」でもその硬貨の大きさとカウンターに置かれるときの大きな音を確かめることができました。そして、今回はアデルの茶色の革の手袋が目につきました。この映画は他にも小道具がいろいろと印象的です。アデルが束で買い求める紙はペン先から出る荒々しい音でその生地の粗さを伝える。そうして書き綴った筆記体の美しさは物語の深淵のほどを想起させ、登場人物たちが身につける衣服はそれぞれの“正装”で確固たる意志を表す。物語はアデルが精神を病んでいく姿を追い、美しい字も衣服も次第に乱れていきます。この映画のメッセージは今となっては釈然としないところがあるものの、イザベル・アジャーニの熱演と効果的な小道具の使い方などが映画という媒体の表現構造に観る人を惹き込むのだと思います。
“正装”といえば映画「アンタッチャブル」も私が注目する作品です。エリオット・ネス役のケビン・コスナーもマローン役のショーン・コネリーもまるで着こなしのお手本のような映画です。ケビン・コスナーはスーツとトレンチコート、ショーン・コネリーはツィードのジャケットが決まり過ぎだ。そして、当時としては当たり前の帽子が実にかっこいい。これも年末にDVDを買い求めて“復習”をしました。この映画はエンニオ・モリコーネの音楽も素晴らしい。こちらは1987年封切り。
2012/01/04
「アデルの恋の物語」の小道具たち
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