2024/06/22

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番のことなど

ふとしたことでこの曲を聴きたくなってiTunesのリストを探したところ見当たらなくてそのことを訝しく思いました。なぜないのかと。記憶を辿ると学生の頃はFM放送からカセットテープに録音して何度も聴いて、コンサートでも聴いて、でも、レコードやCDでは持っていないのではないかと、かといって山積みのダンボール箱からCDを探す気力もなくiTunes Storeでアリス=紗良・オットのアルバムを購入しました。

冒頭の雄たけびのようなホルンを聴くといきなりチャイコフスキーの濃厚なロマンティシズムが襲ってきます。ピアノもオーケストラも相まって幾重にも襞のように聴く者を包み込む。何も言うことはない。ただ聴くのみだがエネルギーを吸い取られていくような感覚もあってこれはチャイコフスキーならではの魅力でもありちょっと怖いところでもある。ロマノフ王朝末期の社会矛盾の中でチャイコフスキーはかくも美しい作品を書き綴ったのだ。美と怖さが綯い交ぜに織り込まれた彼の楽曲は聴きたくもあり距離を置きたくもあります。アリス=紗良・オットのアルバムはリストのピアノ協奏曲第1番とバンドルされています。こちらの方は心おだやかに聴けます。

昨日届いたのは滝澤志野の「Dear Chopin」と「Dear Tchaikovsky」です。バレエのレッスン用に編曲、録音されたアルバムで厚みのあるあたたかい音色はとても好感が持てます。滝澤志野のピアノリサイタルに出かけたのは昨年の7月のことでした。どこまでもあたたかでおだやかで華やかで、うっとりするとはこのことかと思いました。このアルバムのチャイコフスキーもやはり心おだやかに聴けます。バレエの伴奏というシチュエーションがかくも音楽を変えるものなのだろうか。それにしても2枚ともほとんどの曲が続けて2回収録されているのは不思議です。どういう使われ方をするのだろうか。

バレエの伴奏の話は永井玉藻著『バレエ伴奏者の歴史:19世紀パリ・オペラ座と現代、舞台裏で働く人々』(音楽之友社 2023)に詳しい。かつてはピアノではなくバイオリンがレッスンの伴奏を担っていたとか。どこでも手軽に運ぶことができるバイオリンの利便性は重宝されたようです。

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