2009/02/11

『文芸春秋』で読む芥川賞

昨日の朝刊の『文藝春秋』の広告でいくつか目に留まったコンテンツがあって昨日の帰りに買い求めました。今日は午前中のうちに第140回芥川賞受賞作品、津村記久子の「ポトスライムの舟」を読みました。小説はいつしか努力をしないと読めないようになっていて、今日も少しばかり集中できない読書でしたがどうにか一気に読み終えました。途中で昼のラーメンに入れるゆで卵を弱火にかけながら、それも小説の一部のような時間でした。「派遣切り」が社会問題となって、派遣の人たちがどんな条件で働いているか、また、生活がどんなのかがメディアで伝えられるようになって、社会に存在する様々な格差の厳しさを考えるようになりました。それは私だけではないでしょう。それだけに今回の芥川賞は価値ある選びだと思います。ナガセ、ヨシカ、りつ子、そよ乃の4人の大学時代の同級生の人生が今の社会の諸相を描き出しながらナガセが主人公に設定されている文脈は現在の社会問題の核心を踏まえてのことだろう。経済危機を伝えるニュースの陰には翻弄される人たちが必ずいる。その人たちの存在を思い描くことを忘れてはならない。

『文藝春秋』は久しぶりに手にします。活字がぎっしり詰まっていて、また、それなりに多角的な視点のコンテンツで読み応えがあります。写真のページもギタリストの村治佳織や伊勢のイタリア料理店、京料理の特集などあってしばらく楽しめます。新聞もそうですが、インターネットとは情報の質と量が自ずと異なっていて私にはどちらもほしいメディアです。芥川賞受賞作品も『文藝春秋』で読むと一味ちがうように思います。

新聞といえば、今日の朝日新聞朝刊に2か月前に亡くなった加藤周一を回想するエッセイがありました。加藤周一の『羊の歌』『続・羊の歌』(岩波新書)は大学のとき読んだ本の中で最も印象に残っています。その頃は桑原武夫の『第二芸術論』を読んで血気盛んなこともあって、きっと難しい顔をしていたことでしょう。加藤周一は近年は朝日新聞の「夕陽妄語」を読むくらいになってしまいましたが、読む度に自分がとらわれている日常の様々な事々の本質が一瞬に見透かされているかのような覚醒する感覚になったものです。本を読み、考える時間がほしい。

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